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第2回:
あるワインライフ住宅の設計
今回は、あるワインセラーを持った住宅計画を紹介しようと思う。
これからワインとライフスタイルについていろいろと話をしていく前に、1つそのきっかけになるような実例をあげておこうと思いついたわけ。とはいっても、この計画案は、工事の時期がもう少し先になるので今のところ写真と模型で紹介することになる。
依頼主は、仕事柄、長年イタリアワインにかかわっておられる方で、現在は横浜にお住まいで、何度かここ長野県別所温泉を訪れるうち、この場所の気候と風景に魅せられ、セカンドハウスをここに建てることを決意する事となった。イタリアでは都会の住宅と海や山にある住宅という2つの生活拠点を持つことが、中産階級以上の市民にとってはごく普通のことである。夏のバカンスが長いこともあり、あるいは大家族であるイタリアではリタイアした老夫婦の生活拠点としてこの別宅(Casa dellaCampanga)を活用しているためである。
長年イタリアと深い関わりを持ってきたこの施主にも、このようなイタリアの生活慣習が自然と身に付き、単に週末住宅とか別荘という発想ではなく、都会生活と田舎生活を併せ持つことでバランスのとれたライフスタイルを持とうという指向が生まれたのかもしれない。
そういうことで、もともとこの住宅は、豊かな生活を送るための住宅という位置づけで計画がスタートした。もちろん十数年かけて集めてきた貴重なワインを貯蔵し、それらを一本一本開けながら、昔を思い出すという楽しみもあるだろうし、イタリアから訪れる客人をもてなすための空間という目的もある。 いずれにせよ、敷地の持つ特性を十分に生かし、 敷地前方南東に広がる浅間山をはじめとする山並みの景色を大きく取り込むリビングルーム、娘と自分の2つのベッドルーム、そして小さな中庭を囲んでバスルーム、キッチン、ダイニングを計画した。ワインセラーは斜面の敷地形状を生かして半地下に埋め、キッチンと直結して配置している。前後するが敷地の形状はかなり急な斜面で、造成の段階でアプローチする道路が建物を建てる地盤より2.5メートルほど高い位置に なっており、そのため駐車場と玄関が2階のレベルになっている。駐車場からは、緩くカーブして緑化された屋根の向こうに美しい山並みが見える。玄関から一階へと下りる階段は、光が燦々と降り注ぐ明るく広々とした空間で、施主がイタリアで造らせた木製の玄関扉を開けると白い壁に大きな絵がかかる予定である。
施主の夢はワインと暖炉とピアノのある生活である。本人はピアノを弾くことをそれほど得意としているわけではないが、それでも大のクラシックファンで、彼の求めるライフシーンにはこの3点がとても重要な要素になっていると感じられた。原則として料理もワインも自分でサービスして自分で楽しむので、キッチンとセラーは近接して設けてみた。この住宅では、キッチンは裏方ではなくむしろ主役となる存在としてデザインされている。キッチンカウンターの延長部分はダイニングテーブルとして、或いはワイン会など何本かのワインを並べるときにも役立つような位置に配置している。グラスの棚は、家具や建材の匂いがグラスに着かないよう、ガラスの棚板を基本としている。階段とリビングを仕切る壁は、一面が造作けの収納になっており、奥行きは薄く、間口の広い飾り棚にグラスを並べることができるように設計してある。ワイングラスはさすがに食洗器で洗うわけには行かない。数がまとまると洗い場の周りは結構グラスの置き場で困ることが多いので、キッチンにはキャスター付きのワゴンを用意して、必要に応じて水平面積を増減できるように工夫している。ワインセラーの室内環境調整には、当初ルームクーラーを一部改造して使うことを考えていた。しかし輻射式冷暖房という 選択肢も今のところ残っている。セラーの環境としては、年間を通じて温度変化が少ないこと。特に瞬間的な温度変化が2度とか3度とかおこることは最も好ましくないことなので、できるだけ室内環境を一定に保つことを第一に考えている。その上で風がおきない輻射冷暖房はある程度の湿度を維持することも可能であり悪くない選択である。
話は変わるが冷蔵庫式ワインセラーは日に何度も開け閉めして使うと内部の環境が急激に変わるので気をつけないとならない。特に長期間にわたって熟成させようとするワインは、日常的に飲むワインとは別のセラーに保管して、普段は扉を開けないことを原則とすべきである。今回のセラーはそれほど大きくはないが、室内には扉付きのスペースを別途設け、セラーの開け閉めが直接影響しないようなスペースもつくっている。
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